エリートサラリーマンが毎週通い詰めて3年。
「教えてあげようか」の一言から始まった睡眠1時間の狂気
雑味を削ぎ落とし、純粋な旨味だけを濃縮させる魂の釜前
福岡のラーメンシーンにおいて、久留米や博多とは一線を画す独自の進化を遂げた「北九州ド豚骨」。
久留米のような継ぎ足し(呼び戻し)とは異なり、その真髄は「取り切りスープ」にあります。骨の旨味を極限まで抽出しながら、嫌な豚骨臭を徹底的に排した、クリアで重厚な仕上がり。
その代名詞にして源流ともいえるのが、北九州の伝説的名店「ぎょらん亭」です。
この偉大な系譜を受け継ぎ、筑豊の地で唯一無二の一杯を炊き続けているのが「ラーメンまむし」の店主・小松さん。テレビ番組の県民投票でも福岡全域の猛者たちの中で堂々TOP10に選ばれた名店ですが、その創業の裏には、一杯のラーメンに人生を丸ごと賭けた男の、規格外の物語がありました。
今でこそ職人の顔を持つ小松さんですが、もともとは地元大手メーカーに勤めるエリートサラリーマンでした。そして同時に、筋金入りのラーメンマニアでもありました。
毎週末になると博多、久留米、北九州と名だたる店を食べ歩く日々。そんな生活を3年ほど続けたある日、北九州の一軒の店――ぎょらん亭に出会います。
どんぶりを前にして口にした瞬間、全身を貫くような衝撃を受けました。
そこからの行動が、すでに常人離れしていました。それから丸3年間、毎週毎週、その店にラーメンを食べに通い詰めたのです。
最初の食べ歩き時代から数えれば、実に6年間。客としてカウンターに座り続け、ただひたすらにその一杯を愛し続けた小松さんに、ある日、店主がポツリと言いました。
「ラーメン、教えてあげようか」
人生が変わる瞬間とは、本当に何気ない一言です。その言葉を聞いた小松さんは迷うことなく会社を辞め、エリートサラリーマンの座をあっさりと捨てて、ラーメンの道へ飛び込む決断を下しました。
しかし、憧れの厨房で待っていたのは、常識を遥かに超えた修行生活でした。
とにかく、寝かせてもらえないのです。
その理屈のもと、修行中の平均睡眠時間はほぼ1時間。頭で考えるのではなく、体に技術と感覚を叩き込むため、文字通り不眠不休でスープと向き合い続ける過酷な1年間を駆け抜けました。
理屈ではなく、全身の細胞に味と技を焼き付けた小松さんは、1年後に念願の「ラーメンまむし」を開店します。オープン直後からいきなり大人気となり、テレビ取材も重なって店頭には2時間半待ちの超大行列ができました。最後はあまりの忙しさに過労で入院してしまうほど、身を粉にして厨房に立ち続けました。
まむしのスープは、一口すするとガツンと濃厚なのに、独特の嫌な臭みがまったくなく、すっと体に染み渡るような軽さがあります。
その秘密こそが、北九州ド豚骨の真髄である「取り切り」と、常識破りの仕込み方にあります。
大量の豚骨を寸胴に入れてじっくり煮詰めていくのですが、なんと途中で一度「煮詰めたスープを全部捨ててしまう」のです。
そこに再び水を張り、そこからさらに最初の3分の1の量になるまで徹底的に煮詰めていく。最初に臭みや雑味をすべて捨て去り、純粋なコラーゲンと骨の旨味だけを濃縮させるからこそ、あれだけ濃厚なのに臭みが一切なく、最後の一滴まで気持ちよく飲み干せる黄金のスープが完成します。
エリート街道を捨て、3年間毎週通い詰めた憧れの店主に弟子入りし、睡眠1時間で叩き込まれた職人の魂。
北九州ド豚骨の濃厚さと、驚くほどのキレの良さの裏には、一杯のラーメンに人生のすべてを賭けた男の、嘘偽りのない実話が溶け込んでいます。
職人が命を削って煮出した本物のスープを、ぜひご自宅で最後の一滴までご堪能ください。
※冷凍では決して味わえない、寸胴直結の生スープを冷蔵便でお届けします。